10年後の未来をつくるノート|ジャパンSDGsアクション(公式)
ジャンボジェットになりたい18歳から始まった。
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ジャンボジェットになりたい18歳から始まった。

人生で出会った最高の1冊を児童養護施設の子どもたちに届けるプロジェクト ”JETBOOK作戦”。関西の児童養護施設に住んでいた高校3年生がSNSで発信したところから始まりました。
児童養護施設での生活を”修学旅行がずっと続く感じ”と例える、山内 ゆな さん(JETBOOK作戦 代表)。その言葉に込められた思いや、今後の社会的養護の在り方なども含めてお話を伺いました。

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<JETBOOK作戦第一弾の計画書 表紙>

- JETBOOK作戦が始まったきっかけを教えてください。

高校3年の夏に、同じ児童養護施設(以下「施設」)の小学生の子から「本を読みたいから(高校の)教科書を貸してー」と言われたことがきっかけです。私がいた施設には寄付でいただいた本が若干あったものの、小中学生の子は図書館まで距離があるので気軽に行けませんでした。

当時、大学進学に向けて奨学金の情報を集めるためにSNSを使い始めていたので、「施設の本が増えたらいいなー」ぐらいの気持ちで、SNSに「もう読まない本とか集めて全国児童養護施設とか、に寄付するのとかいいかも?とか思ってる」と投稿したら、「本あげるよ!」とたくさんの方が言ってくださって、「じゃあ、本を集めたらいいじゃないか」と思い、JETBOOK作戦を始めました。

第一弾は自分が住んでいた児童養護施設を対象に実施して、約300冊の本が集まりました。寄付者には、本を選んだ想いや子ども達へのメッセージを書いたカードを添えて、本を送っていただくことをお願いしました。

<当時のツイート。施設の子ども達のために何かをしたいという山内さんの想いが瞬く間に拡散された。>

最初は、子ども達も「勝手に本が集まってくるけど、何をやっているんだろう?」と不思議そうに見ていたんですけど、活動について説明してあげると「届いた本の整理するよー」、「貸出シート作るよー」など色々手伝ってくれました。

手伝う中で、メッセージカードを見つけて「これ〇〇さんからもらったんだ」、「パイロットになりたいから、この本読もう!」とか言いながら、互いに本をお勧めし合っていたのが、すごく良かったです。
メッセージカードを本に挟んでもらったことで、間接的な人と人の繋がりが出来ていくのを感じました。

施設に本が集まり、子ども達が喜んでくれるだけではなく、施設の職員さんも本を通じて子ども達との会話が増えた!って喜んでくれて、すごくいいなって感じました。

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” 幼稚園の子、小学生低学年の子から『ミッケ』がすごく人気‼︎
みんなで楽しめる絵本だからなかなぁ。『それ次かして』とか『一緒にやろ!』って声が聞こえてくるのがすごく嬉しい ”
(2021.1.21 山内さんツイートより)

― JETBOOK作戦の第二弾として全国の児童養護施設へ本を届けるために、クラウドファンディングを昨年度実施されましたね。なぜ、全国規模に作戦を広げられたんですか?

子どもたちは入所する施設を選ぶことはできません。たまたま入所した施設の本が少なかったりしたために、情報源が限られるのはおかしいんじゃないかと思い、全国の希望する施設に本を送れるような仕組みを作りたいと考え、資金集めのためにクラウドファンディングを実施しました。

5,472人の方から寄附をいただき、目標額3000万円を上回る、3749万円が集まったことで、予定より多い全国110か所の施設に約1万冊の本を届けることができました。

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<本と一緒に届けた、寄贈者の想いが書かれた"JETBOOKオリジナルのしおり">

― ”JETBOOK”の由来が「本を通じてジャンボジェット機のように力強い想いを届けたい」とのことですが、ジャンボジェットに込められた山内さんの想いを教えてください。

子ども達が安心して空に羽ばたけるような世界をつくりたいなと思っています。本を送ってくださる方がジャンボジェットになって、子ども達がそれに乗って羽ばたける世界になったらいいなと思い、ジャンボジェットからJETという名前を付けました。

ー 施設で同世代のみんなで過ごすからこその楽しさやよかったことを教えてください。

私がいた施設は大舎制(※)で大勢の子どもがいたので、子ども同士はすごく仲が良くて、みんな仲間意識が強くて、何をするときも一緒でした。小学生の時は、みんなでキックベースをしたり、園庭で遊んで。中学生になると、外出が結構自由になるので、徒歩3分ぐらいのコンビニにただ行くだけでも「みんなコンビニいくよー!」みたいな遠足感覚で(笑)。何をするときもみんなでワイワイしていました。

退所した後も、同期や年上の子と連絡を取り合っていて、困ったことがあったら連絡をくれます。子ども同士が仲がいいことはすごくいいと思います。

※大舎制:20人以上が入所する施設形態。児童養護施設についてもう少し詳しく知りたい方は山内さんの記事をお読みください。

― その中でも、一番の思い出はなんですか?

夏にみんなで海に行ったのが楽しかったです。
小さい頃からみんなで何かをすることが楽しくて。海に行った際にも、個々に海に入るんじゃなくて、海の中で鬼ごっこをしたり、ビーチバレーをしたり、とても楽しかったです。
今、自分が何かをやりたいときに、みんなを巻き込んで行うことが出来ているのに繋がっているなと感じています。

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― SNSで奨学金に関する情報収集した際に、SNS上で手を差し伸べてくれる方がいることに対して、どのように感じましたか?

以前は、外部の方に対して、あまりいい印象は抱いていなかったです。
それはなぜかと言うと、小学生の時に公園で遊んでいた際に、いたずらしている子ども達に対して、その親御さんが「あの子達みたいに施設に入れるよ」と言っているのを聞いたり、身近に施設に対する暗いイメージを抱いている人がいたこともあり、施設以外の大人は、敵とはまでは言いませんが、施設の子どもに良い印象は持っていないため、関わりずらいのかなと思っていました。

私の施設からの大学進学者は、過去に1人しかいませんでした。その方も経済的な理由で中退したこともあり、職員さんは私の進学に対して難色を示していました。どうやったら4年制大学に進学できるんだろうと考えた結果、奨学金の情報をSNSで集めることにしました。
そんな中で「奨学金について知りませんか」ってSNSに投稿したらバズって、奨学金の情報をたくさんもらえたんです。施設以外にも、自分が発信したら助けてくれる大人の方がたくさんいるんだなと実感しました。

― 施設の他の子は外部に対してどのような印象を抱いてそうでしたか?

小学生くらいまでは、施設の内外関係なく、接してくれる子が多く、自分自身が施設に対して暗いイメージを持っている子も少ないなと思います。中高生に上がるにつれて、周囲からどう思われているか気になりだしたりして、施設に住んでいることを隠す子もいます。

ー 外部の大人を頼ることについてどう思いますか?

施設の子達は、施設の職員さんは頼ることはできるけど、それ以外の大人に対しては、頼る・頼れないかというよりも、そもそも、頼るということが選択として持っていない子も多いと思います。

施設にいる段階から、周囲の大人に頼る力をつけたり、色んな応援をしてくれる大人がいるということを知ってほしいなと思います。

― ”施設のことを正しく知ってほしい”とSNSで発信されてましたが、どんなことを知ってほしいですか?

私が施設の生活を外部の方に説明する時には” 修学旅行がずっと続く感じ”とお話しています。修学旅行と同じように、仲のいい友達ともあまり仲が良くない友達とも、みんな一緒になれます。子どもたちが毎日ワイワイしながら、時には職員さんに叱られて、それでもワイワイすることを繰り返す場所、すごい楽しい場所だと思っています。

世の中の施設に対するイメージが、私が思っている”修学旅行の様なもの”になれば、施設の子どもたちが、自分が施設に住んでいることが言いやすかったりすると思いますし、退所した際に困ったことがあれば、困っていると気軽に声を上げれるようになるのかなと思います。
この”修学旅行のイメージ”を施設外の人にもわかってほしいし、気づいてほしい、伝わってほしいです。

一方で、私が講演会などで話す際には「私の話したことが全てじゃないです」と伝えています。十人十色で、色んな子ども達がいるので、施設についての伝え方は私自身もすごく難しいなと思っています。

― 職員さんの離職率が高い、理想と現実のギャップがあることなどを山内さんのSNSで拝見しましたが、こうしたらいいとかありますか?

施設の職員になるためには、社会福祉士、保育士などの資格が必要ですが、それって絶対に必要なのかなと感じます。そこのハードルを下げることが出来れば、働きたいと思う方もいると思うのでいいと思います。

学校での施設実習は、社会福祉士なら23日程度、保育士だと10日程度しかないんです。しかも、一つの施設にしか行けない。色んな施設へ行くことが出来る体験会など、応募者側がもう少し施設を選べるようになれば、離職率は下がるのかなと思います。

ー 国の審議会等で自立支援の年齢制限見直しが議論されていますが、お考えはありますか?(2022年2月取材)

私は、18歳から自立可能と判断されるまでというよりも、永遠的に関わってくれる大人が必要だと思っています。
アメリカでは、”パーマネンシー・パクト”という仕組みがあります。一人の子どもを複数人の大人が面倒をみる仕組みです。日本でも、そういう形で、複数人の大人がずっとサポートし続けられる制度が出来ればいいとなと思います。

忙しくて里親に踏み出せない人もたくさんいると思います。パーマネンシー・パクトにより、サポートする大人が10人いれば、一人が月に一度ご飯やお茶にいくだけで、10日間大人と関わることができ、その中で色んな話をすることが出来ます。

ー 最後に、将来の夢を教えてください。

子ども達が「好き」や「やってみたい」の延長戦で生きる社会をつくりたいです。それを実現するために、色んな体験や色んな人と会う機会を子ども達に作っていきたいです。それと同時に、社会的養護の子ども達が、子ども達のための制度を子ども達自身が選んで使える様にしていくことも夢というか、目標です。

ー ありがとうございました。

本棚

■ 山内 ゆな
2004年生。2歳から18歳まで関西の児童養護施設で育つ。高校3年生からJETBOOK作戦を開始し、代表を務める。第69回朝日広告賞の一般公募の部に「愛に、血のつながりがいらないことは夫婦がいちばん知っている。」のコピーが入選。
● Twitter
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JETBOOK作戦’(Twitter)

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